どんな分野でも固有の歴史と文化があるから、分野固有の用語を変えることは(ほぼ)出来ない。が、翻訳することはできる。以下、ブール値とは、「true としての 1 または false としての 0」のこと。
論理の方言 | 普通の言い方 |
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述語〈predicate〉 | ブール値の関数 |
論理式〈{logical}? formula〉 | ブール値の関数を定義するための式 |
述語/論理式の論域〈domain of discourse〉 | ブール値の関数の域 |
個体〈individual {entity}?〉 | ブール値の関数の域の要素 |
項〈term〉 | ブール値とは限らない一般的集合(例:実数の集合)の要素を表す式 |
n項関係記号〈n-ary relation symbol〉 | n変数のブール値関数の関数記号〈関数名〉 |
n項述語記号〈n-ary predicate symbol〉 | n変数のブール値関数の関数記号〈関数名〉 |
恒真述語/恒真式〈tautology | {valid | tautological} formula〉 | 値が常に 1 の定数値関数 |
述語/論理式が同値〈equivalent〉 | 関数が等しい |
述語/論理式が成立〈hold〉する | 関数が、値 1 の定数値関数と等しい |
述語/論理式の外延〈extension〉 | 関数の、値 1 に対する逆像集合 |
きつい方言で困惑したり変な連想をしてしまう人は、右側の「普通の言い方」に翻訳してから解釈する。言い方が独特なだけで内容は普通のこと。集合と関数の計算の範囲内で考えること。
「命題」という言葉はテクニカルタームというより国語辞書的に使っているが、次の意味で解釈・運用する。
- 主語を特定したときに、真偽が判定可能な文
- 主語を特定しないときには、真か偽のどちらかとは断言できない。
- 真偽判定は、超越的な全能者(ようするに神様)を想定する。人間やコンピューターが判定できなくてもかまわない。
論理の非テクニカルターム | 普通の言い方 |
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主語 | ブール値関数への引数 |
主語・述語が揃った文 | 引数を渡したブール値関数 |
主語・述語が揃った文の真偽値 | 引数を渡したブール値関数の関数値 |
「非テクニカルターム」とは正式なテクニカルタームとは言いにくい、半分国語辞書的な言い方のこと。半分国語辞書的だから余計に誤解やマズい連想を誘発するかも知れない。
悪習も他分野と同様。論理だから悪習がない、なんてことはない。
- ラムダ記号〈関数抽象〉はしばしば(ほとんどかも)省略されるので、論理式(記号的表現)と述語(関数)の区別は曖昧。この悪習は中学校以来; $`2x + 1`$ が単に一次式(記号的表現)か一次関数かは曖昧。
- 述語/論理式の論域を明示しない。文脈や空気から推測させる。これも中学校以来の悪習。だが、読む側は明確に論域を把握しなければいけない。これは「プロファイリングしろよ」の一例に過ぎない。プロファイリングの習慣が付いていれば、論域を確定するはず。
- 命題のレベル(提示されただけ)と判断のレベル(ファクトチェック付きの主張)が曖昧。判断を示す記号はあるが、ちゃんと使う習慣はない。(が、専門家が書いたものを読むと、やっぱりちゃんとしてるわ。)
- 「真偽値」の意味が曖昧。真偽値はブール値と解釈されることが多いので、僕は「外延」を使うことにした。論域を $`X`$ として、述語/論理式の外延は $`\mathrm{Pow}(X)`$ の要素。