多様体様構造 メモ

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多様体様構造〈manifold-like structure〉とは
  1. 局所的には単純で扱いやすい。局所自明性〈local tribiality〉と呼ぶ。(形容詞は locally trivial)
  2. 全体としては単純とは限らない。
  3. 単純な局所部分の貼り合わせとして記述と構成が可能。
多様体様構造の例
  1. 普通の多様体
  2. ベクトルバンドル
  3. コジュール接続
  4. G-主バンドル
  5. カルタン接続
  6. スーパー多様体(よく知らんけど)
多様体様構造の基本概念
  1. 自明対象〈trivial object〉: 単純で扱いやすいモノ
  2. 局所自明化〈local trivialization〉: 構造〈空間〉の一部分と自明対象のあいだの同型射
  3. 自明化近傍〈trivialization neighborhood〉: 局所自明化の定義域である一部分
  4. 自明化被覆〈trivialization cover〉: 自明化近傍の集まりで、全体を覆うもの
  5. 変換〈トランジション | transition〉: 自明対象のあいだの同型射。追加条件が付く場合もある。
  6. アトラス〈atlas〉: 局所自明化と変換の集まりで、自明化近傍の集まりが被覆となっているもの。
  7. 前多様体様構造〈pre-manifold-like structure〉: 局所自明性を仮定しない構造
用語のばらつきと欠損
一般論 多様体 バンドル その他
自明対象 ユークリッド開集合 自明バンドル 局所モデル、ベイシック、アフィン対象
局所自明化 局所座標、チャート ゲージ 逆はパラメータ化/フレーム
自明化近傍 座標近傍
自明化被覆 座標被覆
変換 座標変換 変換関数 ゲージ変換?
アトラス 局所座標系
定義のばらつきと曖昧性

多様体様構造の定義では、事前に次の指定が必要。

  1. 前多様体様構造
  2. 自明対象
  3. 変換〈トランジション〉

通常の多様体では、

  1. 前多様体様構造: 第二可算ハウスドルフ空間
  2. 自明対象: ユークリッド開集合
  3. 変換〈トランジション〉: ユークリッド開集合のあいだのなめらかな可逆写像で、ヤコビ行列が非退化〈非特異 | 正則〉なもの

しかし、これに限るわけではない。前多様体様構造として「連結成分ごとに第二可算」の条件のほうが扱いやすい。自明対象も色々な選択肢がある。

  1. ユークリッド開球体: \{x\in {\bf R}^n \mid \| x \| \lt 1\}
  2. ユークリッド開方体: \{x\in {\bf R}^n \mid \forall i.\,| x_i | \lt 1\}
  3. ユークリッド空間: {\bf R}^n

自明対象の選択を変えても、得られる“多様体概念”が変わらないことは証明が必要。だが、あまり証明されてないようだ。

自明ベクトルバンドルの選択も色々ある。広いものと狭いものと中間的なものを挙げると:

  1. M \ltimes V : 任意の多様体と任意の有限次元ベクトル空間の直積に第一射影
  2. {\bf R}^n \ltimes {\bf R}^r : ユークリッド空間どうしの直積に第一射影
  3. U \ltimes {\bf R}^r : ユークリッド開集合と同型な多様体とユークリッド空間の直積に第一射影

これも、自明対象の選択を変えても、得られる“ベクトルバンドル概念”が変わらないことは証明が必要。

変換達が作る構造

X が多様体様構造、部分対象達 S_\alpha \subseteq X \;\mbox{ for }\alpha\in I は被覆で、 (t_\alpha: S_\alpha \to T_\alpha )_{\alpha\in I}X のアトラスとする。

  • S_{\alpha\, \beta} := S_\alpha \cap S_\beta \subseteq X
  •  S_{\beta\, \alpha} = S_{\alpha\, \beta}
  •  T_{\alpha | \beta} := Im(t_\alpha |_{ S_{\alpha\, \beta} }) \subseteq T_\alpha
  •  T_{\beta | \alpha} := Im(t_\beta |_{ S_{\alpha\, \beta} } )\subseteq T_\beta
  •  T_{\alpha | \alpha} := T_\alpha
  •  g_{\alpha\rightarrow \beta} = g_{\beta \leftarrow \alpha} := t_\beta \circ (t_\alpha)^{-1} : T_{\alpha | \beta} \to T_{\beta | \alpha}

この記号の約束のもとで:

  1. T_\alpha, T_\beta, T_{\alpha | \beta}, T_{\beta | \alpha} はすべて自明対象である。
  2.  g_{\beta \leftarrow \alpha} : T_{\alpha | \beta} \to T_{\beta | \alpha} \;\mbox{ for }\alpha, \beta\in I はすべて自明対象のあいだの変換(たちのよい同型射)である。

(g_{\beta \leftarrow \alpha} )_{\alpha, \beta\in I} を“変換群”と呼ぶことがあるが、実際は群より複雑な構造で、 I の直積でインデックスされた自明対象と変換から構成される。

  1.  g_{\alpha\leftarrow \alpha} = \id_{T_{\alpha | \alpha}} : T_{\alpha | \alpha} \to T_{\alpha | \alpha} 単位律に類似
  2.  g_{\alpha\leftarrow \beta} = (g_{\beta\leftarrow \alpha})^{-1} : T_{\beta|\alpha} \to T_{\alpha|\beta} 逆元の存在に類似
  3.  g_{(\gamma \leftarrow \beta)|\alpha} \circ g_{(\beta \leftarrow \alpha)|\gamma} = g_{(\gamma \leftarrow \alpha) |\beta} : T_{\alpha | \beta | \gamma} \to T_{\gamma | \beta | \alpha} 結合律に類似

こういう構造をなんと呼ぶか知らないが、群と呼ぶのはマズいだろう。