例えば、一例としてトポロジーの話題。
正確な書き方と記号の乱用
がモノイドだとすれば、 と書ける。ここで:
- は集合。モノイドの台集合〈underlying set〉と呼ぶ。檜山は、underly と underline をかけて(駄洒落!)、台集合には下線を引く。
- は写像。モノイドの乗法〈mulitiplicationt〉とか二項演算〈binary operation〉とか呼ぶ。
もちろんモノイドの法則〈公理〉である結合律、左単位律、右単位律は前提する。
台集合は、それだけでは単なる集合でありモノイドではない。が、 と書くことが非常に多い。このテの不正確な書き方は記号〈記法〉の乱用〈abuse of notation〉という → Wikipedia。
記号の乱用にはいくつかのレベルがあり、次の例で下にいくほど酷くなる。
- はモノイド (これは正確)
- はモノイド
- はモノイド
- はモノイド (乱用つうより、省略表記)
以下でも記号の乱用を使うが、たまに正確な書き方もする。
命題
次のような命題を“具体的に”考えたい。
- 距離空間は位相空間である。
- 距離連続写像は位相連続写像である。
- 距離空間ではない位相空間が存在する。
次のような言葉が関連する。
- 距離空間
- 位相空間
- 連続写像
これらの言葉(単語)を「聞いたことある」ではなくて「理解している」にするには、上記の命題を正確に記述して証明する(自力でなくてもいいが)必要がある。
距離空間と距離連続写像
が距離空間とは、距離関数 が距離の公理を満たすこと。
(記号の乱用)が2つの距離空間のとき、写像 (ほんとは )が連続写像であることの定義がある(調べればすぐ出てくる)。ただし、定義の流儀はいくつもあって、イプシロン・デルタ方式もあれば、開球を使う方式もあれば、近傍を使う方式もあるだろう。
いずれにしても、距離概念に基づく連続性を持つ写像なので、距離連続写像と呼ぶことにする。
位相空間と位相連続写像
が位相空間とは、部分集合の集合 が位相の公理を満たすこと。
(記号の乱用)が2つの位相空間のとき、写像 (ほんとは )が連続写像であることの定義がある(調べればすぐ出てくる)。
位相構造(開集合族)に基づく連続性を持つ写像なので、位相連続写像と呼ぶことにする。
距離空間は位相空間
が距離空間のとき、対応する位相空間を(記号の乱用を目一杯使って) とする。距離空間から位相空間をどう作るかを具体的に記述する。
距離連続写像は位相連続写像
が距離連続写像のとき、同じ写像()が、位相連続写像 となることを証明する。
距離空間ではない位相空間
距離空間に対して次が成立する。
- 距離空間はハウスドルフ空間である。
よって、
- ハウスドルフではない空間は距離空間にはなりえない。
ハウスドルフではない位相空間を探せば、それが距離空間ではない(どうやっても距離が入らない)位相空間の例になる。
このときも、反例となる空間の具体的な記述、それが位相空間であることの証明、それがハウスドルフではないことの具体的な証明が必要。なんとなくモヤッとした(つまり“具体的でない”)記述では意味がない。