ネコひねり問題のセッティング(だけ)

Mさんの話からの類推。既存の資料を調べたりはしてない。セッティングだけで、どう解くかは分からない。[追記 date="翌日"]Mさんに資料をいただきました。色々と違っていた。後で別記事にするかも。[/追記]
\newcommand{\R}{ {\bf R} }

2つの主バンドルを定義する。

  1. \pi : \R^3 \times (ONFrame(3)\times ONFrame(3)) \to \R^3
    自明バンドル、構造群は SO(3)\times SO(3)
  2.  \pi : ONFrame(3)\times ONFrame(3) \to S^2 \times S^2
    構造群は SO(2)\times SO(2)

内容:

ネコのモデル

伝統的に2つの円筒でモデル化するようだが、ジョイントされた2つの剛体なら何でもいいので([追記]なんでもよくはない[/追記])、2つのL字形のロッドを使う。片方を(ネコの)上半身(下図の青)、もう一方を下半身(下図の赤)と呼ぶ。中心点からの上半身の線に直行する線をハナスジ(鼻筋)、下半身の線に直行する線をシッポ(尻尾)と呼ぶ。

本物の猫では、顔も尻尾も激しく動かすだろうが、このモデルではハナスジ/シッポが胴体に固定されていて動かないとする。

中心点(ジョイントの所)の位置をネコの位置と約束する。

正規直交フレームと姿勢空間

3次元空間の正規直交フレーム e = (e_1, e_2, e_3)f = (f_1, f_2, f_3) を次のように決める。

名前 説明
e1 中心点から出る上半身の矢線
e2 ハナスジの矢線
e3 e1, e2 に右手系で直交
f1 中心点から出る下半身の矢線
f2 シッポの矢線
f3 f1, f2 に右手系で直交

\R^3 の正規直交フレームの全体を ONFrame(3) とすると、

\quad ( (e_1, e_2, e_3), (f_1, f_2, f_2)) \in ONFrame(3)\times ONFrame(3)

ONFrame(3)\times ONFrame(3) には SO(3)\times SO(3) が作用し、この作用は主作用〈principal action〉になるので、この作用のもとで ONFrame(3)\times ONFrame(3) は主等質空間になる。

主等質空間としての ONFrame(3)\times ONFrame(3) を(ネコの)姿勢空間と呼ぶ。ネコの姿勢は SO(3)\times SO(3)-作用で制御可能。

位置空間と主バンドル

\R^3 を(ネコの)位置空間と呼ぶ。特定の位置のネコが特定の姿勢をとっている状態の空間は、位置空間×姿勢空間 \R^3 \times (ONFrame(3)\times ONFrame(3)) となる。

位置空間への射影 \pi:\R^3 \times (ONFrame(3)\times ONFrame(3))\to \R^3 を考えるとファイバーバンドルになる(大域的自明バンドル)。各ファイバーに構造群 SO(3)\times SO(3) が“主に〈principally〉”作用しているから主バンドルになる。

ネコの運動

ネコの位置の変化は写像 \gamma : [0, a] \to \R^3 で記述できる。各時点での位置だけでなく姿勢も考えると、\tilde{\gamma}:[0, a] \to \R^3\times (ONFrame(3)\times ONFrame(3)) で記述できる。P := \R^3\times (ONFrame(3)\times ONFrame(3)) として次の可換図式を満たす。

\require{AMScd}
\begin{CD}
[0, a] @>{\tilde{\gamma}}>>  P\\
@|                            @VV{\pi}V \\
[0, a] @>{\gamma}>>         \R^3
\end{CD}

もうひとつの主バンドル

使うかどうか分からないが; ひねりの情報を落としたネコの姿勢は2本のベクトル (e_1, f_1) で記述できる。これらは単位ベクトルとしておいたので、(e_1, f_1)\in S^1\times S^1 。このことから次の写像を作れる。


\quad ONFrame(3)\times ONFrame(3) \to S^1\times S^1 \\
\quad (  (e_1, e_2, e_3), (f_1, f_2, f_3) ) \mapsto (e_1, f_1)

(e_1, f_2) を決めると、ひねり(体軸の回りの回転)は SO(2)\times SO(2) なので、上記の写像は構造群 SO(2)\times SO(2) である主バンドルを定義する。

問題における制約

写像 \tilde{\gamma}:[0, a] \to \R^3\times (ONFrame(3)\times ONFrame(3)) であって、以下の制約を満たすものが存在すればよい。(位置空間 \R^3 は要らないかも知れない。)

  1. \tilde{\gamma}(0) は、逆さまにぶら下げられた状態である。
  2. \tilde{\gamma}(a) は、床にちゃんと着地している。
  3. いくら猫でも無理な姿勢があるだろうから、\forall t\in [0, a] で、\tilde{\gamma}(t) は“猫がとり得る姿勢”である。
  4. 姿勢の変更は腹筋などで行うのだろうが、この変更(SO(3)\times SO(3) の作用)も猫が実行可能なものである。
  5. \forall t\in [0, a] で、ニュートン力学の法則を満たしている。