月曜日の小ネタ

話題の範囲は広いかもしれないが、知ってることが極めて僅かという意味で「小ネタ」。

なに?

  • 昨日
  • 今日

微分インフラ

上記の4種の微分操作〈導分〉達〈four derivation operators〉を備えたシステムを微分インフラ〈differential infrastructure〉と呼びましょう。「微分インフラ」は、厳密な定義を持つ言葉ではなくて、雰囲気な言葉ですが、上記4種の微分操作の存在は念頭に置きます。

読みにくい人名

  • ヒュープシュマン〈Hübschmann | Huebschmann〉
  • ヴィルコヴィスキー〈Vilkovisky〉
  • ゲルステンハーバー〈Gerstenhaber〉
  • ナイエンハウス〈ネーエンハウス Nijenhuis〉

それほど読みにくくもないけど:

  • ラインハート〈Rinehart〉
  • バタリン〈Batalin〉
  • クーラン〈クーラント Courant〉
  • ドルフマン〈ドーフマン Dorfman〉
  • スカウテン〈スハウテン Schouten〉

参考文献

すべてヒュープシュマン。

  1. 1990 "Poisson cohomology and quantization" 56p
    https://arxiv.org/abs/1303.3903
    読んでない。
  2. 1997 "Lie-Rinehart algebras, Gerstenhaber algebras, and B-V algebras" 13p
    https://arxiv.org/abs/dg-ga/9704005
    チラ見した。ヤコビ恒等式を仮定。ゲルステンハーバー代数、バタリン/ヴィルコヴィスキー代数。
  3. 2013 "Multi derivation Maurer-Cartan algebras and sh-Lie-Rinehart algebras" 34p
    https://arxiv.org/abs/1303.4665
    前書きだけ読んだ。ヤコビ恒等式なし。

動機と方法

  • 多様体上の微分計算を代数的に定式化したい。公理的な代数構造として。
  • 純代数的な議論で得られた結果を、多様体の微分計算にフィードバックしたい。

方法:

  1. 接ベクトル場はリー代数の構造を持つ。一般のベクトルバンドルの切断空間がそうなるかは不明。
  2. スカラー場=関数は、結合的単位的可換代数(環と言えばよい)の構造を持つ。
  3. 接ベクトル場はスカラー場を係数とする加群構造を持つ。習慣上左加群だが、可換係数なら両側加群でいい。
  4. 接ベクトル場は、微分作用素として関数に作用する。習慣上左作用とする。
  5. とりあえず、ここらへんを代数化しよう。
  6. 特に扱いやすい例は、連結コンパクト多様体上の関数環と接ベクトル場リー代数。

断片的な定義や聞きかじり

リー/ラインハート代数:

基礎環 R, 可換代数 A = A/R, リー代数 L = L/RA 上の左加群で、R-リー代数の表現 \rho: L \to Der_R(A) がある。

  1.  [X, aY] = X(a) Y + a[X, Y] ライプニッツ法則
  2.  (aX)(b) = a(X(b)) 左加群の意味で作用は線形

L はリー代数とするのが普通の定義。後にヒュープシュマンはリー代数もどき(前リー代数とか準リー代数とか?*1)に置き換えている。ヤコビ律を仮定しない。ヤコビ律の成立が、構成したQ-作用素が平方ゼロになることに対応する(たぶん)ことを証明している(らしい)。

「微分」の定義

  1. 普通の意味(も色々あるが)。
  2. 代数的導分〈derivation〉作用素
  3. 階付き代数〈graded algebra〉の平方ゼロな次数1な自己射
  4. 階付き代数〈graded algebra〉の平方ゼロとは限らない次数1な自己射

区別できないので、

  1. 微分
  2. 導分{作用素}?
  3. DG作用素
  4. Q-作用素

シュバレー/アイレンベルク作用素

以下の \partial がシュバレー/アイレンベルク作用素。代数的・組み合わせ的に定義される。幾何や解析は不要。\partial が平方ゼロであること( \partial\circ \partial = 0)が代数的・組み合わせ的に証明される(めんどくさい計算を経て)。

 
(-1)^{n - 1}(\partial^D f)(X_1, \cdots, X_n) :=
\sum_{i = 1}^{n}  (-1)^{i-1}  X_i(f(X_1, \cdots \hat{X_i} \cdots, X_n))\\
\:\\
(-1)^{n-1}(\partial^B f)(X_1, \cdots, X_n) := 
\sum_{1\le j \lt k \le n} (-1)^{j + k}  f([X_j, X_k], X_1, \cdots \hat{X_j} \cdots \hat{X_k} \cdots , X_n) )\\
\:\\
\partial := \partial^D  + \partial^B

ゲルステンハーバー括弧の生成関係式

 (-1)^{|a|}[a, b] = D(ab) - \bigl( D(a)b + (-1)^{|a|}a D(b) \bigr)

ゲルステンハーバー代数

*1:追記:前リー代数も準リー代数も既に確定した意味があった。なんて呼ぶんだろうな? リー代数からヤコビ律を外したもの。