話題の範囲は広いかもしれないが、知ってることが極めて僅かという意味で「小ネタ」。
なに?
- 昨日
#微分インフラ
— 檜山, キマイラの爺さん (@m_hiyama) 2021年5月16日
以前、僕が微分インフラと呼んでいたもの(に近い概念)はリー/ラインハート代数〈Lie-Rinehart algebra〉という名前が付いていた、と知った。名前にリーが付いていてもリー代数とは限らないところがミソかも知れない。(replyに続く) - 今日
#微分インフラ
— 檜山, キマイラの爺さん (@m_hiyama) 2021年5月17日
ヒュープシュマンの1997年の論文をチラ見してみた。昔はヤコビ律を仮定してたみたい、それはともかく、今まで全く知らなかった事が色々書いてあってビックリした。(replyに続く)
1997 "Lie-Rinehart algebras, Gerstenhaber algebras, and B-V algebras" 13p https://t.co/VF0IFRcwFW https://t.co/skAmYuJ2lJ
上記の4種の微分操作〈導分〉達〈four derivation operators〉を備えたシステムを微分インフラ〈differential infrastructure〉と呼びましょう。「微分インフラ」は、厳密な定義を持つ言葉ではなくて、雰囲気な言葉ですが、上記4種の微分操作の存在は念頭に置きます。
読みにくい人名
- ヒュープシュマン〈Hübschmann | Huebschmann〉
- ヴィルコヴィスキー〈Vilkovisky〉
- ゲルステンハーバー〈Gerstenhaber〉
- ナイエンハウス〈ネーエンハウス Nijenhuis〉
それほど読みにくくもないけど:
- ラインハート〈Rinehart〉
- バタリン〈Batalin〉
- クーラン〈クーラント Courant〉
- ドルフマン〈ドーフマン Dorfman〉
- スカウテン〈スハウテン Schouten〉
参考文献
すべてヒュープシュマン。
- 1990 "Poisson cohomology and quantization" 56p
https://arxiv.org/abs/1303.3903
読んでない。 - 1997 "Lie-Rinehart algebras, Gerstenhaber algebras, and B-V algebras" 13p
https://arxiv.org/abs/dg-ga/9704005
チラ見した。ヤコビ恒等式を仮定。ゲルステンハーバー代数、バタリン/ヴィルコヴィスキー代数。 - 2013 "Multi derivation Maurer-Cartan algebras and sh-Lie-Rinehart algebras" 34p
https://arxiv.org/abs/1303.4665
前書きだけ読んだ。ヤコビ恒等式なし。
動機と方法
- 多様体上の微分計算を代数的に定式化したい。公理的な代数構造として。
- 純代数的な議論で得られた結果を、多様体の微分計算にフィードバックしたい。
方法:
- 接ベクトル場はリー代数の構造を持つ。一般のベクトルバンドルの切断空間がそうなるかは不明。
- スカラー場=関数は、結合的単位的可換代数(環と言えばよい)の構造を持つ。
- 接ベクトル場はスカラー場を係数とする加群構造を持つ。習慣上左加群だが、可換係数なら両側加群でいい。
- 接ベクトル場は、微分作用素として関数に作用する。習慣上左作用とする。
- とりあえず、ここらへんを代数化しよう。
- 特に扱いやすい例は、連結コンパクト多様体上の関数環と接ベクトル場リー代数。
断片的な定義や聞きかじり
リー/ラインハート代数:
基礎環 , 可換代数 , リー代数 は 上の左加群で、-リー代数の表現 がある。
- ライプニッツ法則
- 左加群の意味で作用は線形
はリー代数とするのが普通の定義。後にヒュープシュマンはリー代数もどき(前リー代数とか準リー代数とか?*1)に置き換えている。ヤコビ律を仮定しない。ヤコビ律の成立が、構成したQ-作用素が平方ゼロになることに対応する(たぶん)ことを証明している(らしい)。
「微分」の定義
- 普通の意味(も色々あるが)。
- 代数的導分〈derivation〉作用素
- 階付き代数〈graded algebra〉の平方ゼロな次数1な自己射
- 階付き代数〈graded algebra〉の平方ゼロとは限らない次数1な自己射
区別できないので、
- 微分
- 導分{作用素}?
- DG作用素
- Q-作用素
シュバレー/アイレンベルク作用素
以下の がシュバレー/アイレンベルク作用素。代数的・組み合わせ的に定義される。幾何や解析は不要。 が平方ゼロであること()が代数的・組み合わせ的に証明される(めんどくさい計算を経て)。
ゲルステンハーバー括弧の生成関係式
ゲルステンハーバー代数
*1:追記:前リー代数も準リー代数も既に確定した意味があった。なんて呼ぶんだろうな? リー代数からヤコビ律を外したもの。