真に大きな有限集合

グロタンディーク宇宙の階層があれば、大きな(より正確には「小さくない」「真に大きい」)有限集合は作れる。したがって、次は成立しない

  • 集合 $`x`$ が有限ならば、$`x`$ は小さい集合である。

グロタンディーク宇宙の定義は Wikipedia グロタンディーク宇宙 参照。念のため再掲:$`\newcommand{\Imp}{\Rightarrow}
\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1} }
`$

  1. (所属に関する)推移性: $`x \in U, y \in x \Imp y \in U`$
  2. ペア集合: $`x, y \in U \Imp \{x, y\} \in U`$
  3. ベキ集合:$`x \in U \Imp \mrm{Pow}(x) \in U`$
  4. ファミリーの合併: $`I\in U, x:I \to U \Imp \bigcup_{\alpha\in I} x_\alpha \in U`$

ペア集合の公理から単元集合 $`\{x\} = \{x, x\}`$ は構成可能。

  • $`x \in U \Imp \{x\} \in U`$

$`U, W`$ を2つのグロタンディーク宇宙として、$`U\in W`$ とする。$`W`$ はグロタンディーク宇宙だから、すぐ上の事実より、

  • $`U \in W \Imp \{U\} \in W`$

が言えるが、$`U\in W`$ は仮定しているので、モーダスポネンスから、

  • $`\{U\} \in W`$

次に、$`\{U\}`$ が($`U`$ に関して)小さい集合ではないことを示す。背理法を使う。$`\{U\}`$ が($`U`$ に関して)小さいと仮定すれば:

  • $`\{U\} \in U`$

$`U`$ はグロタンディーク宇宙だったから、(所属に関する)推移性より、

  • $`U \in U`$

これは矛盾する(ラッセルのパラドックス)。したがって、$`\{U\} \in U`$ は成立しない。つまり、$`\{U\}`$ は($`U`$ に関して)小さい集合ではない。

以上より次が言えた。

  1. $`\{U\}`$ は有限集合(単元集合)である。
  2. $`\{U\}`$ は($`U`$ に関して)小さい集合ではない。

よって、グロタンディーク宇宙 $`W`$ 内に、($`U`$ に関して)小さくない(真に大きい)有限集合が存在する。これは冒頭の主張(下に再掲)の反例を与える。

  • 集合 $`x`$ が有限ならば、$`x`$ は小さい集合である。

誤解がないように、否定された命題をより正確に言えば:

  • 集合 $`x`$ がどこかの宇宙で有限ならば、$`x`$ は特定の宇宙において小さい集合である。

次は「有限」「小さい」の定義からの直接的帰結なので当然に成立する。

  • 集合 $`x`$ が特定の宇宙で有限ならば、$`x`$ はその宇宙において小さい集合である。


宇宙の階層が累積階層かどうかは使ってないので、非累積的宇宙階層でも上の議論は成立する。$`U \in W \Imp \{U\} \in W`$ や推移性をが成立しないと話は変わってくるだろうが、グロタンディーク宇宙以外の宇宙は使ったことがないのでよく分からない。