モノイド閉圏の事例: 前置き

「モノイド閉圏の事例」はシリーズ記事になる予定です(何回になるかは不明)。定義と命題は書きますが、記述はかなりラフなものとなり、解説は最小限、または省略される(解説なし)かも知れません。([追記]最終回の記事: モノイド閉圏の事例: オシマイ - (2nd) 檜山正幸のキマイラ飼育記[/追記]

ドラフト状態で公開するので、後からの変更が激しくなるでしょう。単一の記事内での変更に留まらず、記事の構成が大幅に変化するかも知れません -- それは、記述・投稿の時間順序が論理的順序にはならないと思うからです。

内容:

この事例について

モノイド閉圏〈monoidal closed category | 閉モノイド圏 | closed monoidal category〉の事例を提供します。この事例の名前(固有名)をSGMC(Simple Graphs with Monoidal Closed structure)とします。名前から想像できるように、SGMCのベースとなる圏(台圏)は単純グラフの圏SGです。

単純グラフの圏SGは、比較的簡単で扱いやすい圏ですが、その上にモノイド閉構造を載せたSGMCはあまり簡単ではありません。構造の具体的な定義や具体的な計算に手間がかかるのです。導入までの時間がかかり過ぎる点では、モノイド閉圏の学習用の事例には向いていません。

一方で、計算をガッツリ練習したい人には有意義な事例だと思います。具体的な計算をするための計算デバイス*1が必要なので、計算デバイスの構成も一連の記事内で扱います。紹介する計算デバイス(ラムダ計算の変種)が最良の計算手法かどうか分かりませんが、必要な計算は実行できます。

具体的な計算は計算用紙を消費するだけで面白くはありません。ひたすらドブ板計算です。圏論ではドブ板計算に頼る場面は思いの外多く、2008年の記事で「圏論は、ほぼ計算だけ」と言ってます(ちょっと言い過ぎたけど)。


[追記]これより下はもはやあまり意味がない。引き続く記事内に定義と記述がある。[/追記]

用語と記法

二項演算子記号とコンビネータの記号

名称 図式順記法 反図式順記法 備考
適用 . (ドット) -(-)
結合 ; \circ
モノイド積 同じ
ヒゲ結合 ; \circ オーバーロード
右カリー化 いつもは rΛ
左カリー化 ℓΦ いつもは ℓΛ
右反カリー化 いつもは rΓ
左反カリー化 ℓΨ いつもは ℓΓ

内部二項演算子記号と内部コンビネータの記号

図式順外部演算 図式順内部演算 反図式順外部演算 反図式順内部演算
. ->- (into と読む) -(-) -<->
; \hat{;} \circ \hat{\circ}
ℓΦ ℓφ
ℓΨ ℓψ

二項演算子記号の使用目的

記号 使用目的
., -(-) 写像〈射〉の値, 関手の値, 自然変換の値〈成分〉
;, \circ 射の結合, 自然変換の縦結合
*, ・ 関手の結合, 自然変換の横結合
(-)^ bump-upオペレーター

露骨な表示

随伴系の単位と余単位の露骨な〈陽な | explicit〉表示をメモしておきます。

対象 A∈|SG| が定義する随伴系 AΣ の単位 Aη、ただし、左肩のAは省略。

  • η := Aη (略記)
η::SG^⇒[A, -□A]:SGSG

X.η:X→[A, X□A]
:= (
     λ0x∈X.(
        λ0∈A. (x, a) ∈X□A
        ALSO
        λ1(a→a')∈A. (x, a→a') ∈X□A
      )
     ALSO
     λ1(x→x')∈X.(
       λ01a∈A. (x, a)→(x', a) ∈X□A
     )
   )

対象 A∈|SG| が定義する随伴系 AΣ の余単位 Aε、ただし、左肩のAは省略。

  • ε := Aε (略記)
ε::[A, -]□A⇒SG^:SGSG

X.ε:[A, X]□A→X
:= (
    λ0(f, a)∈[A, X]□A. f(a) ∈X
    ALSO
    λ1(f⇒f', a)∈[A, X]□A. (f⇒f')a ∈X
    OR
    λ1(f, a→a')∈[A, X]□A. f(a→a') ∈X
   )

*1:デバイスは、もちろんハードウェアのことではありません。仕掛け、からくり、道具立て、といった意味です。メカニズム、マシーナリー、とかも言います。